久目と私
- #エッセイ
伊藤野々香 氷見市地域おこし協力隊/デザイナーはじめましてのわくわくたち
2020年8月 大学4年生
当時、この時見た風景と心への衝撃が今に繋がったなんて思わなかっただろう。
大学4年生(建築学生)の夏、初めて久目に訪れた。
所属している研究室の先生の手伝いと学びのため、とある民家の実測を行った。
ふと、1階の一面窓の部屋から外を眺めた。
「わあ。」と、思わずすぐにスマホを取り出しカメラを起動させた。
青空の下、一面田んぼで稲が輝いていたのだ。
こんなにも家と夏と田んぼの組み合わせが良いところが現実の世界に存在するのだろうかと驚いた。
理想的な夏の風景であった。
ここへの衝撃を受けたのは田んぼの風景だけではない。
帰り道の車の中、家が密集しているところを眺めていた。
富山県の家は大きいとよく言われるが、久目の家を見て実感した。
現代風の大きい家は地元でも見ていたが、久目の家はそうではないのだ。
黒っぽい木と白い壁のコントラストが美しく、黒い瓦が一段と映えている。
よく見ると瓦の両端が少し上がっている家や、和洋折衷な装飾が施された家もある。
そして、大学4年生といえば2つの大きな壁が立ちはだかる。
「就活」と「卒業研究/卒業制作」である。
どちらも難航し、奮闘していた。卒業が待たずとも近づいている3月。
人とのご縁により、「氷見市地域おこし協力隊」になった。
卒業後はどこか企業に入って仕事をするのが当たり前だと思っていたが、このような進み方もできるのだと、地域により近いところで様々なチャレンジができると、不安よりもわくわくの方が大きかった。
現在この記事を執筆しているのは2021年の9月。
4月末から久目に住み始めて、5ヶ月が経とうとしている。
協力隊としてのミッションが久目地区内のことであるため、久目地区交流館や自宅で様々なデザインやイベントの計画等の仕事を行っている。
ありがたいことに多くの地域住民の方に声を掛けていただき、活動の場へご挨拶にうかがう機会をいただいている。
久目では“はじめて”と多く出会える。
5月、にょきっと頭を出しているたけのこ掘り。脂がのったイノシシ肉でBBQ。
6月、1個1個丁寧に梅摘み。
7月、星と間違えるくらい綺麗で幻想的なホタルたち。
8月、歯ごたえがありつつぷりっとしている鯉の刺身。
駐車場のライン引きや俳句、ヨガなど幅広い、いや、幅広すぎるほどの体験をさせてもらっている。
こういったわくわくやどきどきが、活動の原動力に繋がる。
私が感じているこの感情の恩返しと言えるのかはわからないが、地域おこし協力隊の活動としても、一地域住民としても、一つでも多くの恩返しができたらと強く思う。
おもしろい地域、人たちに出会えました。
この記事を読んでくださった方々が、少しでも久目に興味をもってくれたのなら。行ってみようかなと思ってくれたのなら嬉しいです。
お待ちしております。