建物と暮らし
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藝術農民 / おらっちゃの久目編集部 空き家はフロンティア 藝術農民はじまりの母屋編
延べ床面積全国最大級を誇る富山の住宅。久目地区は氷見市のなかでも移住者の多いエリアで、その多くが富山・氷見らしい重厚な物件を改修して、自分たちらしい暮らしを楽しんでいます。
『藝術農民』代表の浅見直希さんと『里山Retreat & Kitchen 阿迦舎(アーカーシャ)』主宰の浅見裕子さんご夫婦も、2018年から久目に住み始めた移住者です。賃貸を取り次いだり、新たに取得したり、ここ数年で6軒もの空き家活用を開拓されたというお二人。田畑に料理、音楽まで、農から広がるこの土地ならではの暮らしかたを教えていただきました。
芸術農民の母屋は重厚な9DKの二階建て一軒家。広い家だけではなく納屋もセットになっているのがこのあたりの家の特徴で、“百姓”として農を営む二人にはぴったりのつくりなのだそう。
「もともと高岡や富山に仕事に出ながら農家もするのがこのあたりの文化なので、兼業農家向きにつくられた家だと思います。これからの時代、コンパクトな設備で多機能な農家をやっていくにはすごく合ってる」と直希さん。
廊下にはこの秋に収穫されて、出荷を待つお米たち。廊下は一畳分もの広さがあって、むかしは、畳を敷くことでひとつなぎの大広間にして、冠婚葬祭の場としても活用されてきたといいます。
その先には大人数でわいわいと料理ができる台所。中心にある台は直希さんの手作りです。
襖を閉めれば居間になり
襖を取り外せば大人数が入れるコンサート会場に。
『藝術農民』という屋号の通り、農村から藝術を発信していこうと、オーケストラプロジェクト『交響する氷見』も主催する二人。たくさんの人が集まれる母屋も、藝術活動の一つの場になっています。
今では自然栽培の田んぼを中心とした農家を営む浅見さんですが、意外にも移住当時は「農家になろう」とは思っていなかったそう。
「コミュニティ形成も大事だと思っているので、地域外から人を呼んで『田植え体験』をしたり、『家開き』をしてBBQをしたり。広々した空間で色々な人と集まるところから、もっと空き家を活用できるなとか、オーケストラを結成してコンサートをやろうとか、今とこれからにつながる動きが生まれていっています」
「自分のためだけじゃなく、地域の中に役割をもつなかで、ぶれない軸が生まれていきます。農も音楽も食もコミュニテイも、人が生きていくうえで誰もに必要なもの。百姓って百の姓で、暮らしに必要なことは何でも自分たちでつくっていく生き方。百姓を目指しながら、自分のオリジナリティを加えられる百一姓になりたいですね」
移住、就農、農地の拡大、オーケストラの組織…と一年一年着実に歩みながら新しい試みを広げている浅見さん夫妻。そうしたなかでまた新たな仲間ができ、拠点も増えてきているのだそうです。
『空き家はフロンティア 干し柿拠点と研修者棟編』へつづく